画家を志し、自分を捜しはじめる
三宮一将は、これまでに精力的に作品を制作して参りました。はじまりは高校生、17歳の時に出会った一枚の小さな油絵でした。その絵を描いたのは世界的に有名な画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ。そのたった一枚の小さな油絵との出会いが、彼を画家になる決心へと導きました。その後、現在のキリスト教絵画の制作へとつながる原点となったのは、東京藝術大学在学中の卒業制作です。「自らのルーツ」をたどり、自分と対峙した彼は、自分が生まれたのは広島であり、育ったのは山口県、長崎県。そこは原爆や戦争の悲しい記憶や歴史が残る場所でもありました。生まれた地にルーツを求めた時、心に残っていた情景は、幼い頃に母親に連れられて訪れた「原爆ドーム」でした。薄暗い原爆ドームの中に入って、頭上を見上げると、鉄骨がむき出しの天井から青空が見えました。建物の中から青空を見た子どもの頃の鮮烈な記憶に、青年となり画家を志していた彼の心に浮かんできた新たな記憶は「天の国、空の上の方にいるはずの見たこともない神様」だったそうです。特にヨーロッパなどにあるカトリック教会の天蓋ドームの内側に、確かに天の国や飛翔する天使たち、また聖人たちが描かれています。実際に作品コンセプトに着手した際に、彼はそこに相反するものを投影します。「天と地、上と下、生と死、上昇と落下、こちら側とあちら側・・・」
学生時代に住んでいた所沢市にある航空記念博物館へ行き、撮影した写真をもとに、シルクスクリーンによる版画作品『auf dieser Seite』 (164.0×236.0cm 1995年)という作品が誕生しました。その版画作品のシリーズは高く評価され、94/95/96年には【全国大学版画展】で「町田市立国際版画美術館収蔵賞」を、95年には【俵賞展】で「俵賞」を受賞しております。
大学院を修了後も制作活動を続け、2000年に制作の拠点を大分に移し、2001年全国公募のコンクール【第8回 別府現代絵画展】で「大賞」を受賞。同年【熊日総合美術展21世紀アート大賞2001】では「奨励賞」を受賞しています。その後も「VOCA2008」(上野の森美術館)や県内外での個展、グループ展、最近では神奈川県川崎市にある聖マリアンナ医科大学病院3階小聖堂内の「聖マリアンナ・チャペル・ギャラリー」にて作品を展示しています。